バベルの本箱

ミステリー&幻想怪奇&文学:徒然なる読書備忘録

 アヒルと鴨のコインロッカー

 
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
(2006/12/21)
伊坂 幸太郎

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 「一緒に本屋を襲わないか?」 大学進学のため、東北の町に引っ越してきた"僕"は、アパートの隣に住む、超美形で悪魔を彷彿させる謎の青年に誘われ、"犯罪"の片棒を担ぐことになる。そして、知らぬ間に"三人組"の過去、そして現在のストーリーに足を踏み入れることになる。現在と過去が交互に語られ、「動物殺し」のキーワードの下、忌まわしい事件と悲劇、その報復の全貌が、緊迫した空気の中、次第に明らかになる。「アヒルと鴨」そして「コインロッカー」が結びつくまでの息苦しくも胸詰まる長い旅であり、それぞれの痛ましい"青春"の物語である。

 「重力ピエロ」等他作品にも共通するが、弱者に対する理不尽な暴力を徹底的に憎む作者の姿勢が、ストレートに投影されている気がする。淡々とした文章、どこか清廉さを感じさせる雰囲気によって、重苦しくなく、それでいて痛烈なメッセージがダイレクトに読者に伝わってくる。"河崎"と"ブータン人"との関係、特に後半部分の"河崎"の人物描写(変化)に多少無理がある気がしないでもないが、トリックや謎解き以上に、ストーリー全体に吸引力が溢れており、差ほど気にならない。
 
 そして、何と言っても因果応報の必然性である。被害者たちの苦しみ、「嫌な感じ」がものすごく現実味を帯びて感じられ、絶対に許してはならない"存在"への憎悪と裁きの念が沸々と沸き起こってくる。現実の世界では諦めなければならないこと、動かしようのない壁の前に立ち尽くすしかないこと、憎しみと無力感に骨身を削られ、空洞のような時間を生きていかなければならないこと。それらに対し、法の範囲を超え、"神"の手のごとく、因果応報の環を閉じることができるのは、小説の世界だからこそなのかもしれない。それでもやはり、どこかに"応報"の力を信じずにはいられない。存在してはならない者、人間(生き物)ではない者に対する"正当な"裁きを。


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